マカロン君〜最小位相構成をもつ立体の真実とは

やあ子どもたち。寒いけど元気でやっているか。おじさんは最近、前の家よりも寒い家に引っ越したのでこの冬はとくに寒い冬になりそうだよ。さて今日はオイラー標数(以下オイラー数)、オイラーの多面体定理について考えてみよう。(オイラー数の説明はここ
「位相的に穴のない、閉じた立体」についてのオイラー数は一体どうして常に2なのか。そのことについて考えてみたい。おじさんはまず1つ知っていて、それは閉じた立体全体を平面でスキャンする思考実験だ。

これは閉じた立体を上から下にスキャンする仮想平面を考え、仮想平面が立体の各頂点の位置を通過する際のオイラー数の変化について考える方法で、それは実に、仮想平面が立体の最初の頂点に出会う時と、最後の頂点から離れる時の2回だけ+1されるのみという興味深い事実であり、その他の場合は、頂点を仮想平面が通過する際のオイラー数の変化はどこもゼロであるというものだ。
しかし直感的理解という意味ではどうもまだ間接的だ。そこで今回はこれとは別のアプローチで考えてみたよ。
これは立体の頂点・エッジ・面からなる各位相要素の挿入・削除を行う際のオイラー数の変化について考えてみるというものだ。すると、立体が「位相的に穴のない、閉じた立体」である限りは、頂点・エッジ・面のいずれかをどう挿入・削除しようとも、オイラー数は変わらないことに気付く。
例えば、任意のエッジに頂点を挿入する場合を考えてみると、頂点が1つ増え、エッジは頂点の挿入位置で分割されるので1本のエッジが2本となり、つまりエッジが1本増えることとなり、オイラー数の変化としては頂点増加分とエッジ本数増加分とで相殺しあってゼロとなる。任意のエッジ上にある頂点を削除する際も同様にオイラー数の変化分はゼロだ。もうひとつ、任意のエッジを削除することを考えよう。この場合、エッジの両端の頂点は残り、エッジが一つ消え、消したエッジが分け隔てていた隣接する二つの面が1つになるので、面も1つ減る。頂点数に変化はないので、この場合もオイラー数の変化分はゼロだ。最後に、面が消える場合はどうだろう。面が1つの頂点になるとき、面の周囲を構成していた同じ数の頂点とエッジが消える。そして、面が縮退し、1つ頂点になる。都合で考えると、面が1つ消えて頂点が1つ増え、n頂点nエッジが減るため、オイラー数変化分としてはやはりゼロだ。
以上、このようにして立体の各位相要素の削除を徹底して繰り返し行い、面と頂点とエッジ数がどれもゼロでない、最終的に残る、「位相的に」最小の立体とはどのようなものか想像してみたよ。それは上の右側の図のようなものとなった。
これのオイラー数は明らかで、面が2つ、エッジが1つ、頂点が1つなので、2+1−1=2だ。マカロン君と名づけてもいいかも知れない。あらゆる「位相的に穴のない、閉じた立体」はどれもこの位相的に最小の立体である、マカロン君へと帰着されるので、当然それらのオイラー数はどれも必ず2になる、というわけさ。