「老ヴォールの惑星」を読んだ


小川一水という作家の、「老ヴォールの惑星」を読んでみた。私の場合、この本を手にとったきっかけは何といってもまず表紙のイラストの美しさだった。見た瞬間、どこぞの異世界を連想させる機械とも有機体ともつかぬ、海面をひた走る巨大な円筒状の物体。
この本は4つの短編「ギャルナフカ迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂った男」から構成されるが、私はやはり本のタイトルともなっている「老ヴォールの惑星」が一番好きだと感じた。
何というのだろうか、とにかくアプローチが斬新なのである。我々とは全く別の恒星系、惑星、環境に生きる知的生命体の話であるにもかかわらず、難しい単語の羅列もなくすらすらと読むことができ、誰も見たことのないはずの彼らの日常や思考にシームレスに入ることができ、共感できるのである。
まさに表紙の絵のイメージがぴったりと当てはまる気分のいい作品だった。この見たことも想像したこともなかったはずの異世界環境と、空間的にも時間的にも、そして知的にもはるかにスケールを圧倒している生命体の故郷に、あなたもぜひ、思いを馳せてみてはいかがだろうか。