人々を動かす

150名近くいる職場のフロアレイアウトを、一挙に変える作業を通じてわかったこと

  1. メールや全体会議などでいくらPRしても全員には伝わらない。
  2. 整理して片付けてくださいとかお願いしても、殆どの人は切羽詰らないとやらない。
  3. いくら自分が苦労してる状況といえども、無関心な人は己の要求のみ通そうとする。
  4. 逆に、苦労している当事者からは誰が協力的で誰が他人事として見ているかものすごーくよくわかる。なぜかって当事者は一人しかいないのに対し、当事者から見た、PR対象のメンバーは150人いて、その全員の反応の違いを知っているためである。このことは何か組織イベントの推進に対して無関心を決め込む傾向のある人には考えさせられる内容かも知れないと思うのだが、いかがだろうか。
  5. 最後までこっちが発信している情報に共鳴しない人も一定割合いる。例外もあろうが、この共鳴のしやすさと、その人の全体的な能力とは、比例している場合が多い気がする。

●PRのやり方
整理整頓の推進など、内容が個々人の利益不利益に直接関係しない場合、PRはしつこくやらねば流布しない。会社間や部署間といったフォーマルなものではなく、内内でお願いレベルで人のかたまりを動かしたい場合は、前にメールを出しましたよねとか、あの時言いましたよね、とかの理屈攻めではだめで、本当に肉弾戦しかないのである。それは、文字通り、あの手この手で頭をひねり、波状攻撃的にじわじわと浸透させなくてはならない。

●人は人・他人を理解しよう。無理なら少なくともその人を理解しようとする努力だけでもしよう
人は所詮他人である。自分の推進しようとしていることには無関心なのが基本だ。どうして自分が推進しようとしているのに、逆のことを言うのか。どうして動いてくれないのか。この時、無関心な人は何も悪気があってそうしているのではないので、決して憎んではいけない。「あいつ何でやらないんだ」「何考えてるんだ」そんなことを思うだけ無駄である。感情の無駄遣いだし、少しも問題解決にならない。無関心な人には、相応の理由があるのだ。それどころではないのである。むしろそこの事情を、PRしている当事者側としては理解しようとする姿勢が必要だ。でなければ全体にPRする資格など最初からない。全体を動かす素質としては明らかに不十分だろう。

●感情をコントロールしよう−キレたら誰もついてこない
巨大な構造は、局所的に働く強い力ではなく、広くしかし決して止まない、一定に持続する小さな力によって形成されるものだ。たくさんの人を動かす時は、どんなお願いも十分に誠意・礼儀をつくし、しかし確実に、それもしつこいと思われないように工夫しながら、しつこくやろう。感情を表に出したり、攻撃的・あきれた相手・ちょっとやそっとの反発意見を前にして、「本気でキレル」なんていうことはもっての他である。
また、そもそもの目的を遂行したいだけであって、協力しないひとを恨んだり、非難したりすることが目的ではないことを肝に銘じよう。一人ひとりの反応に対して深く考え込まずに、自分の中でも流しながらやるのがコツだ。深く考え込んで疲れ切って、こんなこと二度とやりたくないと思ってしまうのは悲しい。

●まとめ
つまるところ、小さな小さなプレッシャーを、しかしながら日々コツコツと確実に与え続けることが、肝要なのである。相手が苛立ったりした場合は、君のやり方が悪い。方法を変えよう。でもやめるんじゃなくて、方法を変えるだけだ。そしてそれを探ること自体を自分自身が楽しむこと、人々を動かすためには、それしかない。「リーダシップ」などというあいまいな概念はここでは全く出てこないし、そんなもの考える意味ない。