力学的運動エネルギー(1/2)mv^2の導出

◆そもそもの動機というか目的
高校物理あるいは大学の教養の物理学で習った「仕事の定義」を、ニュートン運動方程式
m\frac{d^2}{dt^2}\mathbf{x}=\mathbf{F}

の右辺に適用してみようと思い、右辺に適用ということは左辺にも同じことをしてあげないといけないので、
\int_0^X\quad m\frac{d^2}{dt^2}\mathbf{x}\quad d\mathbf{x}=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

こうなりますと。ま言うまでもなく右辺は原点位置から、位置Xにまで質点mが移動した際に力Fによってなされた仕事を表しているわけだが、これを見ると、この左辺は一体、これは何か、もっと解り易い表記にできないかということでどうにか式をこねくりまわして、(というと言い方が悪いな、ま要するに素直に式の変形をしてね、)で最終的に、あ、これが高校物理で習った運動エネルギーの公式そのものではないかとなったのが46歳(と11カ月)の先日だったので、今日はそこに至るまでの過程を赤裸々に綴っていくので参考にしてほしい。 
そういうわけで右辺はもう意味がわかっているので置いておいて、これは専ら左辺をどう変形していくかという物語だよ。◆左辺の式の変形
 さ、この問題の左辺は、このままでは困ってしまうので、
\mathbf{v}=\frac{d\mathbf{x}}{dt}

とまずは置いてみよう。すると以下のように式は書き換えられる。
\int_0^X\quad m\frac{d}{dt}\mathbf{v}\quad d\mathbf{x}=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

さらに、積分記号のdxは上記二つ前の式より、
d\mathbf{x}=\mathbf{v}dt

と書けるな。すると以下のようになるね。
\int_0^T\quad m\frac{d}{dt}\mathbf{v}\quad \mathbf{v}dt=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

おっとxに関する積分をtに関する積分にしたので、積分範囲も変わってるから気を付けてほしい。で並び替えて以下のようになる。
m\int_0^T\quad \quad \mathbf{v}\frac{d}{dt}\mathbf{v}\quad dt=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

さてさて、この形にきたら思い出さなくてはいけないというか、気づきが必要だそれは、上記被積分項の中に出てくる、
\mathbf{v}\frac{d}{dt}\mathbf{v}

という表記は、vの2乗をtで微分した際に出てくる表記の半分だねと(わからない人は合成関数の微分について復習してくれ)。じゃそれを積分しようってんだから、積分した結果は
0.5*v^2だねと。以下のように書けるねと。
\frac{1}{2}m\left[\mathbf{v}^2\right]_0^T=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

じゃ、あとは積分定数を決定するべく、どこからどこまで積分したかったんだっけという操作で、時刻t=0で、v=0、時刻t=Tでv=Vとすれば、
\frac{1}{2}m\mathbf{V}^2=\int_0^X\quad \mathbf{F}\quad d\mathbf{x}

●変形した左辺式の解釈〜それはあの、「運動エネルギー」だった。
 ま、ただここで力Fについて大事な条件があるよ。上述の様に式変形をしてきた中で当然といえば当然の条件なのだが、それは、右辺の積分が計算可能な場合のみ、だ。つまり質点が移動する際の始点と終点のみで右辺の値が決まり、途中の経路やまして時刻によってその値が変化しない。位置xのみによって決まる。そのような力を保存力というよ。例えば重力や静電気力そして、質点に繋がれたばねの弾性力なんかも保存力だし、指で一定の力で押し続けるなんていうのも保存力だ(もっともそんなロボットみたいな指があればの話だが)。摩擦力や空気抵抗といったものは保存力ではないな。まそのような保存力Fを受け続けて、質点の速度がゼロからvになったとしたとき、質点mの力学的運動エネルギーは、.
「運動エネルギーは質点の質量mと、その最終的な速度vによってのみ決まり」
\frac{1}{2}m\mathbf{V}^2

と表せると、いうことが以上の考察をもって、解ります。
 でまあ数学的な言い方をすれば、運動方程式の両辺を経路積分すると、左辺に質点mの運動エネルギーを確認することができるねという感じだね。ま敢えて驚愕するとすれば、物体が経てきた経路には一切関係なく、物体の質量mと、速度vのみで、その物体の運動エネルギーは決まる。という事実の再確認だね。●思い返せば〜長い道のり
 思えば、僕が高校物理を習ったのはもう30年も前だけど、「仕事」の定義というものを教えられて、「運動エネルギー」の公式を教えられて、それらが同じになる「保存則」というものがあるんだと教えられただけで、またしかにそれを知っておりさえすればいろいろな問題が解けてしまうのだが、「何故?」という疑問すら、持てなかったなというのが、ま今回自分で式変形をしてみてその疑問を解けた今だからこそ、思うことかな。(ま教えられ方というか、疑問を持てなかった自分が残念だと言いたいだけ。) その公式を知って保存則を知って、ルールを知って、演習問題をたくさんやり訓練された僕の物理の偏差値はいつも70近くだった。大学に入って大学の低学年時代には量子力学が大好きになり水素原子の波動関数を紙と鉛筆さえあれば導出できてしまうようにもなり、それほどまでに物理が大好きだった僕でもこの運動エネルギーの公式の形については深く考えたことは一度もなかった。そのまま物理が得意だと思って46歳になってしまった。
 ちなみに僕は浪人をしてS台予備校に2年通ったわけだけど、そこで当時教えられた物理学というのは、それとは一線を画したもので、上記のような式変形も紹介してくれていたように思う。でも、それも、そもそも「何故?」という疑問が持てなかった当時の自分には馬の耳に念仏というわけだった。(当時、(今もかな?)高校物理で、運動エネルギーの式の導出というのは紹介されたりもしたが、それはFを一定とした場合のみに納得できる内容であり、Fが位置xによって変化する場合でもこの表記になるという証明がされずに、つまり本質がわかりようもない形でしか紹介されない。)

なので、疑問を持つというところが一番大事なのかなと思ったりもする。教えられたものをただ、「そういうものかね」と流してしまうのではなく、腑に落ちないものは、丸暗記を支持された公式に対してさえ、疑問を持ち続ける。そして自分なりに結論を出す。まそういことが大事なんじゃないかと。疑問を持っているから、答えを知りたいから、それを教えられたときに頭に入るものなんじゃないか。
 だから僕もそうはなれず、30年前には「そういうものかね、そう導出するのかふーん」で流してしまったわけだけど、46歳になった日々でま目の前の問題を突き詰めて考えている中、漸くその「何故?」が自然と湧いてきた、そのことは本当に自分でもうれしいと思っているんだ。
じゃ今日はこの辺で。チャオ!