この定理は、「位相的に穴のない、閉じた多面体の各頂点の角度損失を全て足しあわせると、それは4π、つまり720度になる」ということを教えてくれる。どうしてそうなるのかについて以下考えてみよう。
まず、
位相的に穴のない閉じた多面体の全頂点の角度損失の和= 360度×全頂点数−多面体を構成する全多角形の内部角の総和・・・(1)
である。これは前回書いた角度損失の定義を、視点を変えて言い直した話であり、異論のないところであろう。さらに、上記右辺の第2項「多面体を構成する全多角形の内部角の総和」について考えてみる。今、i番目の構成多角形である、フェイスiについて個別に考えてみると、フェイスiの内部角の総和は、(フェイスiの稜線の数−2)×180度 であるから、Σ(i→F)に、全フェイスについての総和という意味をもたせたとすると、
多面体を構成する全多角形の内部角の総和= Σ(i→F){フェイスiの内部角の総和}= Σ(i→F){(フェイスiの稜線の数−2)×180度}・・・(2)
となる。ここで閉じた多面体においては1つの稜線あたり2つの多角形がその両側にあることを考えると、
Σ(i→F){フェイスiの稜線の数}=2×全稜線の数
と書き換えできる。
なので式(2)は以下のように書き換えできることがわかる。
多面体を構成する全多角形の内部角の総和= Σ(i→F){フェイスiの内部角の総和}= 360度×全稜線の数−360度×全多角形の数・・・(3)
(3)を(1)に代入して、(1)を書き直すと、
位相的に穴のない閉じた多面体の全頂点の角度損失の和= 360度×(全頂点数−全稜線数+全多角形数)・・・(4)
が得られる。
ところで、(4)の括弧内の値は、オイラー数に他ならず、位相的に穴のない閉じた多面体では必ず2という値をとることが知られているので、最終的に、
位相的に穴のない閉じた多面体の全頂点の角度損失の和=720度
であるということが確認された。
ではどうして位相的に穴のない閉じた立体では、オイラー数が常に2になるのか、これもなかなかおもしろい証明というか、考え方があるので、またいつか気が向いたら書くことにする。