粒子法シミュレーション:浮力


粒子法シミュレーションでは、粒子間の相互作用計算しかしてないのに、シーンの構築さえ適切に行ってやれば、いろいろな身近な物理現象によく似た挙動が簡単に再現できてしまうところが楽しい。物理現象と呼ばれているものは、人間がそれを見てどこで抽象化をしたかというだけの問題という気すらしてくる。浮力もその一つだ。
重力の働く空間の中に、硬い弾性体粒子を集めて作った風船と、液体の粒子を混在させてみたところ、浮力によく似た効果が再現された。というわけで、今回はこれを見ていて思ったことをメモ。
どうやら浮力ってのは、風船の下に溶媒粒子が次々ともぐりこもうとする力によって働くものらしいということだ。つまりある粒子から見て、自分より上にある粒子を押しのけてその下に潜り込もうとする場合は、上に風船があるところにもぐりこむ方が、上に風船のない空間にもぐりこむよりも、少しだけ楽に行けるというわけなのだ。今回風船の中には何も入ってないので当然のことだ。
要は風船じゃなくてもその中に入る物質の密度が溶媒粒子より大きいか小さいかで決まるというわけだ。重力下では密度の小さいものの下にはより密度の大きいものがもぐりこもうとする効果があり、結果密度の小さいものは上に大きいものは下にいくというわけだ。
そしてさらに考えをすすめてみると、風船という仕切りがなくてもそれは同じことなはずだ。温かい水が上に上がり、冷たい水が下にいく「対流」と呼ばれる現象も、温かい水と冷たい水の密度差による効果なのではないだろうか。液体の場合に限っての推測だが。

粒子法 (計算力学レクチャーシリーズ)

粒子法 (計算力学レクチャーシリーズ)